最終更新日(update) 2007.12.31

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仁尾正文 近詠
父の忌 近火見舞 権宮司
寒梅 春泥 誤字一つ
座禅草 尾の縺れ 癌の句を
青酸橘 葉脉
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平成20年1月号抜粋の目次へ


   蔵出しの

 歯応へのよき新蕎麦を尋め当てし
 
 怖気つく程草虱つけてきし
 
 とめどなき黄落の奥三河かな
 
 朝寒やカイゼル髭は遂に逝く
 
 蔵出しの新酒もて祝ぐ受勲かな

 日の出づる前に餅搗き神送る
    
 竜の玉清貧とふはもう死後か
    
 樹上より神鶏天降り留守詣

平成19年12月号抜粋の目次へ


 
      葉 脉

 葉脉の端の端まで鶏頭の朱
 
 秋の夜の文机狭く狭くして
 
 をとつひの寒蝉が聞き納めなり
 
 梨熟るるむかし因幡の白兎
    
 秋耕にもの尋ねゐる徒遍路
 
 秋麗の水かげろふの幽かかな
 
 新藁を二人掛りで放り上ぐ
 
 やうやくにやうやく残暑去りたるに

平成19年11月号抜粋の目次へ


   青 酸 橘

 鮎簗のがれ場へ一歩一歩かな
 
 簗番の好意づくしの鮎食へり
 
 取りたての小豆は尾張大納言
 
 壱岐行きの小さな港鰯干す
 
 露置いて白に如くなし花芙蓉

 萩の花鐘の余韻は撞木にも
    
 雲堂に閂かかり秋の蝉
    
 日のひほふ国より届く青酸橘

平成19年10月号抜粋の目次へ


 
      滝

 七滝の空より滑り落ちにけり
 
 一の滝二の滝三の滝に壷
 
 頃合の岩あり掛けて滝を見る
 
 滝見台岩を穿ちし磴の上
    
 百間滝見むと百間下りけり
 
 激つ瀬を纏めて滝を落しけり
 
 滝落つる音腸に応へけり
 
 一塊を追うて一塊滝落つる

平成19年9月号抜粋の目次へ


   癌の句を

 一枚の植田青田の中にかな
 
 雨安居の老師にマイクなど要らぬ
 
 七色の一目十万株の百合
 
 ビール今のんどを落つる快楽とも
 
 車椅子寄せ合うてゐる端居かな
    同人太田新吉氏逝去
 ほととぎす声をしぼれり君なくて
    同人鈴木千恵子氏逝去
 梅雨荒れや全く思はざる訃報
    同人笛木峨堂氏逝去
 癌の句を投じて死せりはたた神

平成19年8月号抜粋の目次へ


 
     尾の縺れ

 尾の縺れ一風で解く鯉幟
 
 初鰹づくしの皿鉢料理かな
 
 上流に鯉を追ひ込み溝浚ふ
 
 晩げまで植田の苗を見て廻る
    
 信仰の島々を置き夏霞
 
 梅雨入り前為すことのまだ四つ五つ
 
 楽止めば大噴水のぴたと止む
 
 大雨が来るぞ来るぞとはたた神


平成19年7月号抜粋の目次へ


   座 禅 草
 エルムの芽汝も大志抱きここに来し
 誰も予期せざるところに座禅草
 実物の坐禅草なり触れてみし
 声殺し北帰の雁の飛ぶを待つ
 一揆のごと苗行灯の固まれる
 舞阪の大名雁木水ぬるむ
 このつつじ転勤五度について来し
 極楽寺さまの長尻おぼろの夜

平成19年6月号抜粋の目次へ


 
     誤字一つ

 合掌に井桁に春椎茸の榾
 
 火挟みで焼けし春子を取り分くる
 
 合流の渓高鳴りて春長くる
 
 柳絮飛ぶ水車は今も木歯車
    
 残雪にあらず今暁降りし雪
 
 羊刈る今年も梨の花の頃
 
 谷底より湧き上がりくる花吹雪
 
 誤字一つ脱字が一つ暮遅し


平成19年5月号抜粋の目次へ


   春 泥
 もてなしは厚き春子の炭火焼
 春子噴ける榾ごと苟に貰ひけり
 結界の青竹いよよ春の雨
 御本殿見ゆ春泥の段葛
 春泥に取られし靴は下したて
 茎立ちのキャベツの破れかぶれかな
 咲き満ちしはくれん一花だに散らず
 集魚灯さ揺らぐ程の桜東風


平成19年4月号抜粋の目次へ


 
     寒 梅

 鶏旦や太白星を打ち仰ぎ
 
 駅伝や箱根の険を目のあたり
 
 ひよんどりの最長老の舞ひ短か
 
 ひよんどりの纏頭貼る場所なくなりし
    
 鼓動してをり掌中の寒雀
 
 初旅は五つ違ひの姉の葬
 
 頭上より時報のチャイム日脚伸ぶ
 
 寒梅の中の青軸殊にかな

注:
*ひよんどり
*青軸


平成19年3月号抜粋の目次へ

 
     権宮司
 白袴着け御火焚の権宮司
 煤逃げに又無しロダン展の来て
 降り出していよよ日の暮早きかな
 水仙やうなじは既にをとめなる
 取つときの冬至南瓜をはうたうに
 火渡りや燠ちろちろと炎上ぐ
 火渡りを終へ弦月を仰ぎけり
 除夜詣声にはせねど妻褒むる


平成19年2月号抜粋の目次へ


 
     近火見舞

 寄らば飛び付かん構への草虱
 
 冬紅葉散るを怺へて火のごとし
 
 尋ぬれば言下に熊の糞といふ
 
 幾峠越え短日の奥三河
     へっつい まいど
 湯神楽の竈舞処の真ん中に
 
 神楽見て真夜の復路を矢の如く
 
 冬耕の胡散臭げな受け答へ
 
 肝心の近火見舞を言ひ落す


平成19年1月号抜粋の目次へ

 
     父の忌
 大鰡の二尺程飛ぶ矢継早
 朝寒の湖割つて船翔べりけり
 湖の桟橋鱸船繋ぐ
 鯊釣の道具の一つ糸切歯
 富士山の貯へてゐし水澄めり
 流鏑馬の騎手控所に新走り
 連休の過ぎて俄かに秋深む
 吊し柿粉をふき父の忌が近し

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