最終更新日(update) 2009.11.30
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仁尾正文 近詠
ななかまど 飛騨街道 去年今年
ひよんどり 梅東風 百千鳥
草競馬 忍冬 花うばら
無党派 鰡漁師 聖鐘
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平成21年12月号抜粋の目次へ


  聖 鐘
           
 聖鐘の短く鳴れり一位の実
 
 収穫を終へし修道士の林檎
 
 神父さまは長身痩躯秋澄めり
  
 秋薊青畝の句碑の自署隠す
     
 てのひらに雪虫載せて見せに来る
     
 寝墓十基あるかなきかの秋の風
    
 名月を函館山で見たる贅
    
 朝市の鮭をたうたう買はされし

平成21年11月号抜粋の目次へ


   鰡 漁 師
           
 無口にはあれど好漢鰡漁師
 
 際やかな鱗を夜の鰯雲
 
 御旅所の秋草を刈る役貰ふ
  
 休暇明け分校の子の真白き歯
     
 早暁が最も盛ん夕化粧
     
 富岳より八方に展ぶいわし雲
      くんま
 蕎麦咲ける熊の里の水車かな
    
 神を褒めそやし祝詩風祭

平成21年10月号抜粋の目次へ


  無 党 派
           
 流域のここより変る河鹿笛
 
 呆気なし休肝の日の冷奴
 
 うつくしき領布をいちにち熱帯魚
  
 羅のきれいどころが土俵下
     
 青棚田見下ろす底に千曲川
     
 無党派なれどナイターに喜憂して
    
 西瓜切る金環蝕が見えたる日
    
 為すことのいまだいくばく桐一葉

平成21年9月号抜粋の目次へ


   花うばら 
           
 青苔のかばかりの地に芭蕉庵
 
 扇買ひ投扇興に招ぜらる
 
 父親の胸に顔埋め昼寝の子
  
 びつしりと咲ける丈余の花うばら
     
 羅の献饌白紙銜へつつ
     
 台風の既に六号沖縄忌
   
 国分尼寺跡方五丁青嵐
    
 高鋏自在に動き枝下ろす

平成21年8月号抜粋の目次へ


  忍 冬 
           
 二十棹ほどの渡しを夏つばめ
 
 甲掴み弁慶蟹を怒らせし
 
 渡しまで百歩忍冬よくかをる
  
 菖蒲の端もて捩じ結はう軒菖蒲
     
 何の苦もなしわらんべの草の笛
     
 時の記念日さざなみの志賀泊り
    
 特急を臨時に停めて登山者は
    
 万緑の木曽截ち割つて川流る

平成21年7月号抜粋の目次へ


  草 競 馬 
           
 町あげて春の祭の浜競馬
 
 草競馬取材のヘリが幾度も
 
 浜競馬人出は二万五千人
  
 ファンファーレ本格に鳴り草競馬
     
 フライングに咎めなどなし草競馬
     
 勝馬に余勢まだある草競馬
   
 ともがらの馬券的中草競馬
    
 海境にタンカーを置き草競馬

平成21年6月号抜粋の目次へ


  百千鳥 
           
 青軸の梅のかをれる建国日
 
 岳人の歯切れのよかり雲雀東風
 
 夕おぼろ寝仏山のまだ見えて
  
 ささ濁りして三月の川流る
     
 草餅を提げて白寿の姉を訪ふ
     
 春の夢李白と盃を交しゐる
    
 しんがりに芽吹くいかつき銀杏の木
    
 長屋門囲むいぐねの百千鳥

平成21年5月号抜粋の目次へ


  梅 東 風 
           
 平飼ひの卵をひとつ日脚伸ぶ
 
 冬の日の一揺らぎして落ちにけり
 
 渓音の遠くなりたり蕗の薹
  
 梅東風の神鈴の緒に触れにけり
     
 野を焼ける左巻きなる旋風
     
 水槽の雪代山女競り合へる
   
 茎立ちや大和三山雨の中
    
 百年をうたひ継ぎきし卒業歌

平成21年4月号抜粋の目次へ


  ひよんどり 
           
 一枝の烏薬加へし若葉籠
 
 ほたほたと篝火落すひよんどり
 
 大禰宜の井伊の家紋の冬羽織
  
 寒垢の男フラッシュ攻めに遭ふ
     げいか
 雪安居猊下肚より声を出す
     
 樹齢もて寒林統ぶる岳樺
    
 寒梅や藩校の名を今も継ぎ
    
 木北限の海女連れ立ちて小正月

平成21年3月号抜粋の目次へ


  去年今年 
           
 かつと目を開きたるまま鵙の贄
 
 十二月八日未明の風の音
 
 くつさめや第二芸術論とふありし
  
 受賞者を上座に招じ年忘れ
     
 雑炊を食ふ別腹といふがあり
     
 賜りし白寿が縫へるちやんちやんこ
   
 神木に火の粉飛びつく除夜詣
    
 光年の星の瞬く去年今年

平成21年2月号抜粋の目次へ


  飛騨街道 
           
 猿柿や飛騨街道に幾峠
 
 美濃信濃嶺を連ねて冬に入る
 
 奈落冷ゆ轆轤のための木の楔
  
 干柿の粉ふく父の忌なりけり
     
 神留守の木曽の地酒の七笑
     
 暖炉燃ゆ木地師の数の小座布団
    
 山頂の天守真近に冬泉
    
 木曽川に逆落しせる冬紅葉

平成21年1月号抜粋の目次へ


  ななかまど 
           
 風の意のままの這松ななかまど
 
 火の山の湯釜の上を鳥渡る
 
 初鴨の来て十日経し山上湖
  
 ななかまどルビーのやうな実をさはに
     
 朝寒の湯気上げてゐる野風呂かな
     
 かつと目を開きしままの鵙の贄
    
 地の人はお飛びといへる草虱
    
 十月の朝顔澄んで気を貰ふ

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