最終更新日(update) 2011.11.30
平成23年 仁尾正文 近詠
白山 小止みなく 白息
寒あやめ 青き踏む 薮椿
花水木 藩校 風葬
今切 聖岳 吉備の国原
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平成23年12月号抜粋の目次へ
平成23年6月号に掲載

    
    吉備の国原

  水攻めの城址蓮の実飛ぶばかり

  自刃せし行年水の澄めりけり

  豊秋の昏鐘渡る吉備の国

  島流しされて天寿を蘇鉄の実

  姫駕籠の轅にも箔菊かをる

  天平の層搭秋の夕映えに

  秋収の吉備の国原けぶらへり

  鈴木夢死にたり秋の彼岸明

平成23年11月号抜粋の目次へ
平成23年7号に掲載

    
   聖 岳
            よう
  信長の遺骸杳とし流れ星

  花野いくつ来て正面に聖岳

  新豆腐一丁あれば当て要らぬ

  川中島産の白桃届きけり
         しりえざま
  林中の後方より秋の声

  出稼ぎが帰つてくるぞ盆とんぼ

  親離れせしは十五の雁の頃
   
  落葉掃く女子高生のボランティア

平成23年10月号抜粋の目次へ
平成23年6月号に掲載

    
    今 切

  靴履いて僧登りきし滝まつり

  行者らの末裔集ひ滝祭る

  棟札は明治十年滝不動

  泉辺に挽き臼程の濯ぎ石

  経止めば木魚止まれり夏の萩

  今切を出る潮速き晩夏かな

  里の名は今も三軒蕎麦の花

  けたたましき朝のひぐらし坊泊り

平成23年9月号抜粋の目次へ
平成23年7号に掲載

    
   風 葬

  風葬のありたる野辺の草いきれ

  星に手の届きさうなる簗番屋

  裏返し表に返し串の鮎

  根株まだ燻つている簗番屋

  ひこばえの合歓も天女の睫もつ

  晴女二人加はる梅雨の旅

  風通るところにいつも籠枕
   
  枇杷熟れて落つるにまかす塩の道

平成23年8月号抜粋の目次へ
平成23年6月号に掲載

    
    藩 校

  藩校は今も名門桐の花

  驚けりずばり梅雨入りを気象庁

  夏安居の庫裏賑やかにそばを打つ

  玄関の幅三尺の夏暖簾

  でで虫の機嫌の角を伸しけり

  足を引き抜いては植田見て廻る

  津波禍の友より便や風薫る

  煎じ茶の十薬を干す縄目にし

平成23年7月号抜粋の目次へ
平成23年7号に掲載

    
   花 水 木

  海見ゆる山に遠足許されし

  頃過ぎの片栗ちとも顔上げず

  都忘れ無人となりし測候所

  猫額の田楽舞処春遅々と

  塩の道坂がかる辺に泉湧く

  牡丹の初花に雨ざんざかな

  家苞は心づくしの笹粽
   
  日系の二世三世花水木

平成23年6月号抜粋の目次へ
平成23年6月号に掲載

    
   薮 椿

  落椿さはに田楽桶狭間

  吉良没後三百年の薮椿

  花曇吉良の仁吉に一?上ぐ

  野の著莪を葺き加へたる花御堂

  大潮を待ち恒例の磯開き

  親離れ子離れをして初桜

  直系の男の子なりけり入学す

  目通りは優に八寸山桜

平成23年5月号抜粋の目次へ
平成23年3月号に掲載

    
   青き踏む

  ころころと水の音せる白魚簗

  オホーツクよりの便りは木の根明く

  陵王を生徒が舞へる雪まつり

  寒あやめ咲き継ぐ雛を終へたるに

  声ころし北帰の雁の立つを待つ

  十日見ぬ間に春田打ちいや進む

  留別はいつも薄紅梅の頃
    鈴木三都夫氏米寿
  米寿とて通過点なり青き踏む

平成23年4月号抜粋の目次へ
平成23年2月号に掲載

    
   寒あやめ

  日に一度見に来て跼む寒あやめ

  落城史冬草野辺にへばりつき

  ゑんどうの風除けの藁切り揃へ

  冬帽子脱いで手櫛を使ひけり

  早梅の一樹につられたる一樹

  矢のごとく日の過ぎてゆく二月かな

  茎立ちの先陣競ふ三方原

  薄氷や棒のごとくに鯉沈み

平成23年月号3抜粋の目次へ
平成23年3月号に掲載

    
   白 息

  兄死にてより離農せり一茶の忌

  穀倉を疾駆冬至の日の眩し

  生家跡花柊の香あるのみ

  雁落つる枯野の果に一湖あり

  注連替へて年番終ふる小晦日

  顎引いて直立不動出初式

  白息の挙手や指先まで力

  放水のしぶきここまで出初式

平成23年2月号抜粋の目次へ
平成23年2月号に掲載

    
  小止みなく

  巫女の注ぐどぶろく受くる目の高さ

  合掌の軒の下まで冬野菜

  五箇山は平家谷なり笹子鳴く

  冬蜂の翅動かせて歩きゐる

  踏板を渡り蓮田に下りにけり

  掘り出せる蓮根太刀のごとかざす

  焼べ足せる大榾すぐに炎出す

  小止みなく冬の慈雨降る夜をこめて

平成23年1月号抜粋の目次へ
平成23年1月号に掲載

   白山  
  腰強き新蕎麦飛騨も奥の奥
 数多の実あららぎ一樹真赤なり
 激昂の短き声を朝の鵙
 奥飛騨の口あたりよき新豆腐
 惜敗の野球夜寒の俄かなり
 秋深き隣は巴里へ旅立てり
 門跡寺花茶の垣をめぐらせる
 雪嶺の白山見ゆるもみぢかな

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