最終更新日(update) 2018.12.01
平成30年 白岩敏秀 作品
青き地球 和  紙 日の温み
海 光 る 魔 法 瓶 民  話
山の鉄路 始発列車 図 書 館
伝 書 鳩 風 の 庭 欅 立 つ

平成30年12月号抜粋の目次へ
平成30年10号に掲載

    
   欅 立 つ

堰越ゆる水の豊かに九月来る

垂直な非常階段震災日

青空に圧され蓑虫垂れてをり

爽やかに少女の髪のすぐ乾く

仲秋の影を正しく欅立つ

朝刊の湿り手にあり秋寒し

りんご採る林檎の影に身を入れて

石庭の砂紋に流れ初紅葉

平成30年11月号抜粋の目次へ

     
     風 の 庭

夏草に声道草のランドセル

輪郭を消しつつ海月沈みゆく

流木に残る杉の香秋暑し

折鶴に角の多くて天の川

新涼の水にグラスのくもりけり

音立てて伸ばす提灯盆用意

波音の転がる渚九月来る

初萩の紅にはじまる風の庭

平成30年10月号抜粋の目次へ
平成30年10号に掲載

    
   伝 書 鳩

枇杷を採る脚立を二等辺に組み

七月の空戻りくる伝書鳩

打水をすれば日暮るる京のまち

片陰を歩く夢殿までの距離

羅の喪服に水のごとくをり

月見草日暮れの声に呼ばれたる

水音の村を離れてゆく晩夏

夏終はる橋のなかばに川覗き

平成30年9月号抜粋の目次へ

     
     魔 法 瓶

くもりなき白さをもちて寒卵

静電気びびつと寒の明けにけり

立春や魔法よく効く魔法瓶

ひとつぶの星早春の城下町

後ろ手に風を握りて麦を踏む

グローブにバシッと直球下萌ゆる

半濁の米の磨ぎ汁建国日

啓蟄の大地を削り畝つくる

平成30年8月号抜粋の目次へ
平成30年8号に掲載

    
   始発列車

初鰹車座へ潮風の来る

因州に生まれ育ちて更衣

蹴り上ぐるぶらんこ余花の高さまで

牡丹売始発列車で来しと言ふ

金魚見る顔を床屋に戻さるる

紫陽花の揺れはじむ雨降りはじむ

昏れきらぬ川面に光る初蛍

柿若葉仔牛はすでにタグつけて

平成30年7月号抜粋の目次へ

     
     魔 法 瓶

くもりなき白さをもちて寒卵

静電気びびつと寒の明けにけり

立春や魔法よく効く魔法瓶

ひとつぶの星早春の城下町

後ろ手に風を握りて麦を踏む

グローブにバシッと直球下萌ゆる

半濁の米の磨ぎ汁建国日

啓蟄の大地を削り畝つくる

平成30年6月号抜粋の目次へ
平成30年6号に掲載

    
   民  話

山畑や老婆のために梅白し

虫出しの雷や因幡は雨となる

豆腐屋が団地を通る雛まつり

産み月の牛へ因幡の木の芽風

ふるさとの民話に拍手あたたかし

沈丁の香り乱して鶏走る

添へ竹の葉のひらひらと豆の花

墓石の濡れてゐるなり放哉忌

平成30年5月号抜粋の目次へ

     
     魔 法 瓶

くもりなき白さをもちて寒卵

静電気びびつと寒の明けにけり

立春や魔法よく効く魔法瓶

ひとつぶの星早春の城下町

後ろ手に風を握りて麦を踏む

グローブにバシッと直球下萌ゆる

半濁の米の磨ぎ汁建国日

啓蟄の大地を削り畝つくる

平成30年4月号抜粋の目次へ
平成30年4号に掲載

    
   海 光 る

餅を搗く音夕暮れの音となる

青空をこぼれて二羽の初雀

女正月シャンパンの栓とび上がる

寒析の路地に響きて路地に消ゆ

警策のひびくや寒の固まりぬ

寒林や遠きところに海光る

屈み込む少女のひとみ薄氷

梅の花万葉集に恋の歌

平成30年3月号抜粋の目次へ

     
     日の温み

大根洗ふ悲鳴のごとき水しぶき

枯菊を抱けばなほある日の温み

電柱の影伸びきつて日短し

湯豆腐や部屋の小窓に星映り

夕映えの明るき窓の柚子湯かな

少年の朝シャンをする冬休

宿題の終はらぬ夜の虎落笛

出勤の巫女の割りたる初氷

平成30年2月号抜粋の目次へ
平成29年12号に掲載

    
   和   紙

大根のすつと抜けたるよき日和

芭蕉忌の暮れゆく山を見てゐたり

小春日の手首に輪ゴム溜めてをり

綿虫はいつも日暮れの貌で飛ぶ

山茶花に日差しの低し峡の村

電柱の等間隔に時雨れけり

拝殿につがひの鳩来る神迎

あたたかき和紙の手触り笹子鳴く

平成30年1月号抜粋の目次へ
平成30年1月号に掲載

     
     青き地球

木犀に止めし靴音遠ざかる

身を折つて秋刀魚焼く火を育てをり

列なして青き地球を雁渡る

新米の音の入りゆく米袋

灯に映ゆる林檎の紅き怒り肩

秋草やもう木を挽かぬ製材所

木瓜の実やそくそくと日の暮れてゆく

行く秋の切り取線の鋸目かな

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