最終更新日(update) 2019.12.01
平成30年 白岩敏秀 作品
鹿  沼 記念切手 午後の手紙
こふのとり 過 去 形 砂 丘
四月の雨 吹 く 風 大きな眼
手押しポンプ 巻  貝 幹の太さ

令和元年12月号抜粋の目次へ 
令和元年12月号に掲載

 流れ星眠れぬ牛が音たつる
風に飛び雨に構へていぼむしり
秋桜揺るるは言葉交はすごと
十六夜や褒められて耳悦べり
長き夜を短く打つて鳩時計
冷やかや花瓶の造花揺れ知らず
ややこしきジャングルジムの月の影
啄木鳥や幹の太さが音に出て

令和元年11月号抜粋の目次へ 
令和元年11月号に掲載

 夏帽子赤いリボンの方が姉
ダリア咲き二重瞼の少女来る
吹く風に水の匂ひの秋初め
巻貝に波音とどく九月かな
ひぐらしの鳴くふるさと空晴れて
山国の水の冷たさ鶏頭花
再会の握手の固しいわし雲
子の声にすぐに応へて木の実落つ

令和元年10月号抜粋の目次へ 
令和元年10月号に掲載

 手押しポンプ 青葉木菟手押しポンプの生きてをり 教室の二階に見えて枇杷熟るる レース編む窓辺に白き雲ほどき 海へ出て出水濁りの広がりぬ 団扇の手一番星を指しにけり 炎昼の口笛に犬戻しけり 月光の海月に影のある不思議 星祭る子の糸切歯よく切れて

令和元年9月号抜粋の目次へ
令和元年9月号に掲載

 六月の水に浮かせて豆腐切る 月光の降り来海芋咲きにけり 覗く子に跳ねてバケツの濁り鮒 生まれたる目高に今日の日射あり 星の夜の青さを残し明急ぐ 田植機の進む列車と同じ向き 田植終ふ浮き苗流れゆく日暮れ 鹿の子の海を見てゐる大きな眼

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令和元年8月号に掲載

 四月の雨 四月来る木々に愛語の飛び交ひて 芹を摘む水は過敏にすぐ濁る 花こぶし空仰ぐこと思ひ出づ ここだけの話に桃の咲いてをり 春祭足袋のほつれを縫うてをり 月明の風に敏くて藤の花 春惜しむ砂丘に砂を積み上げて 平成の終はる四月の雨降つて

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令和元年7月号に掲載

 四月の雨 四月来る木々に愛語の飛び交ひて 芹を摘む水は過敏にすぐ濁る 花こぶし空仰ぐこと思ひ出づ ここだけの話に桃の咲いてをり 春祭足袋のほつれを縫うてをり 月明の風に敏くて藤の花 春惜しむ砂丘に砂を積み上げて 平成の終はる四月の雨降つて

令和元年6月号抜粋の目次へ
令和元年6号に掲載

    
      砂 丘

耕して田を水平にして戻る

木の芽風鶏の羽毛の吹きこぼれ

摘草や橋でつながる隣町

野遊や子の口笛は湖へのぶ

雲雀鳴く砂丘の空の明るさに

春ともし鶴を織り出す機の音

波音に別れてゆきぬ遍路杖

飛び石にゆらぎのすこし雛送り

令和元年5月号抜粋の目次へ
令和元年5月号に掲載

     
     過 去 形

混沌の底の水餅つかみ出す

朝の日を湖上に広げ春立ちぬ

山焼や風が炎となり奔る

白魚の紙漉くごとく掬はるる

首の鈴鳴らして恋の猫となる

過去形の話ばかりの春炬燵

調教の馬のいななき水温む

子どもらの夢のぼりゆくしやぼん玉

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平成31年4号に掲載

    
      こふのとり

神鏡に映りてしんと鏡餅

朝刊のことんと軽くなる三日

出初式空を濡らして終はりけり

小寒や音たて破る菓子袋

こふのとり死す冬椿ひとつ咲き

参詣の玉砂利寒の音たつる

風花を追うて少女となりにけり

銅鐸を鳴らせば応へ寒の空

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平成31年1月号に掲載

     
     午後の手紙

返り花少年すでに変声期

電柱の影は日時計冬田打つ

湯豆腐の真昼の音に煮えてをり

短日や午後の手紙の濡れて着く

朝の湯に柚子の香りの残りをり

吊るさるる鮟鱇の目に見えしもの

初雪や鏡くもらす朝の息

寒鴉おのれ励ますごと啼けり

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平成31年2号に掲載

    
      記念切手

枯蟷螂見えざるものに鎌あぐる

蜜柑むきしあはせの香を広げけり

モナリザの縄文土偶冬ぬくし

芭蕉忌や記念切手を旅に買ふ

産土の森に風鳴る神の留守

切干のちぢみはじめの色となる

冬もみぢ怒涛は崖に音を捨つ

木枯や鳥は斜めに流されて

平成31年1月号抜粋の目次へ
平成31年1月号に掲載

     
     鹿  沼

深秋や祭のまちとなる鹿沼

ジャンプして少女のつかむ草の絮

温め酒鉄橋に鳴る汽車の笛

朝寒の声玄関を出てゆけり

はぐれ鹿耳振つて雨払ひけり

零余子落つ余熱冷めゆく登り窯

木の実独楽双子に違ひ現るる

新走り女杜氏の薄化粧

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