最終更新日(update) 2024.05.01
句会報(R6)
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令和五年度静岡白魚火忘年俳句大会 令和6年2月号掲載
令和五年度栃木県白魚火忘年俳句大会・忘年会報告 令和6年2月号掲載
秋の吟行俳句会~今高野山~ 令和6年2月号掲載
坑道句会十一月例会報 令和6年2月号掲載
旭川白魚火新年句会 令和6年3月号掲載
令和六年栃木県白魚火会新春俳句大会 令和6年3月号掲載
名古屋白魚火句会五周年記念感謝の会と句会 令和6年3月号掲載
森淳子代表ご苦労様会 令和6年4月号掲載
島根地区白魚火俳句大会開催―白岩主宰を迎えて― 令和6年5月号掲載
雛流し吟行句会記 令和6年5月号掲載

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令和6年2月号掲載 句会報

令和五年度静岡白魚火忘年俳句大会

相澤よし子

令和6年2月号へ 

 十二月とは思えぬ暖かな日和に恵まれた令和五年十二月十日、静岡白魚火忘年俳句大会が開催されました。
 遠方より、顧問であり副主宰の檜林弘一氏に御参加いただき、参加者二十四名(不在投句者三名)で、担当の勝間田句会の皆さんの準備、進行のもとに行われました。当季雑詠三句(不在投句二句)出句で、選句は檜林弘一副主宰特選五句入選十句、鳥雲同人特選三句入選五句、白魚火同人五句選で行われ、披講後、檜林弘一副主宰より丁寧な選評をいただきました。また、副主宰の特選句には御染筆の短冊が授与されました。
 三都夫先生亡きあとも、先生の教えを引き継ぎ、素晴らしい作品が投句され、和やかな中にも活気ある句会となりました。

 檜林弘一副主宰 特選
冬紅葉ちりちり色を燃やしけり    柴田まさ江
夕映えや金鈴子とは名にし負ふ    小村 絹子
おしやべりの聞こえてきさう紅葉山  柴田まさ江
ころがれば拾ひたくなる木の実かな  横田じゅんこ
浮寝鳥夕日は山に帰りけり      坂下 昇子

 鳥雲同人 選
  本杉郁代 特選

茶室へと誘ふ石蕗の花明り      辻 すみよ
ころがれば拾ひたくなる木の実かな  横田じゅんこ
参道の日差しの澄みぬ冬紅葉     檜林 弘一
  小村絹子 特選
ころがれば拾ひたくなる木の実かな  横田じゅんこ
鴨百羽浮かべて湖の楽しさう     辻 すみよ
取り替へてもらつても負け木の実独楽 坂下 昇子
  坂下昇子 特選
やり直し出来ぬ悔いあり木の葉髪   大塚 澄江
茶室へと誘ふ石蕗の花明り      辻 すみよ
道連れは落葉踏む音風の音      横田美佐子
  辻 すみよ 特選
目玉まで新巻鮭の塩まみれ      檜林 弘一
ブティックにアロマの香り冬うらら  藤田 光代
ころがれば拾ひたくなる木の実かな  横田じゅんこ
  横田じゅんこ 特選
銀杏散る真つ只中にゐてひとり    相澤よし子
留まるも舞ふも枯葉にある力     大石 益江
茶の花や約しく暮らし恙無く     大石 益江
  大塚澄江 特選
目玉まで新巻鮭の塩まみれ      檜林 弘一
虎落笛空にらくがきして居りぬ    山西 悦子
朴落葉空筒抜けになりにけり     橋本 快枝
  田部井いつ子 特選
虎落笛空にらくがきして居りぬ    山西 悦子
蟷螂の身構ふるまま枯れにけり    大塚 澄江
朴落葉空筒抜けになりにけり     橋本 快枝
 句会終了後には席を移し、檜林弘一副主宰を囲んでの懇親会を行い、美味しいお料理を頂きながらの歓談の場となりました。



令和6年2月号掲載 句会報

令和五年度栃木県白魚火忘年俳句大会・忘年会報告

杉山 和美

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 栃木県白魚火忘年俳句大会が十二月三日(日)、宇都宮市中央生涯学習センターに於いて開催されました。当日は小春日和に恵まれ、二十三名の参加のもと開催となりました。俳句大会の前に、星田一草顧問の「瑞宝小綬章」受章と栃木県俳句作家協会「七木賞」受賞のお祝いとして、記念品贈呈と写真撮影、その後柴山要作会長から祝辞、星田一草顧問から謝辞がありました。
 俳句大会は五句投句、七句選、うち特選一句で行われました。

 終了後、上位入賞者に賞品の授与、全員に参加賞が配られました。その後、特選句の選評を各自が行い、曙、鳥雲同人による作品鑑賞が行われ、終了となりました。

 その後、会場を移し、八名の参加により忘年会を行ない、俳句談義、吟行のこと、これまでの出来事など大いに語り合い懇親を深めました。
 曙、鳥雲同人の特選句及び参加者全員の当日の一句は、次のとおりです。

曙、鳥雲同人特選句
  星田 一草  特選

冬菊のもたれ合ふ身の軽さかな  奈良部美幸
  柴山 要作  特選
小春日や跳ねて引きたる人力車  星  揚子
  中村 國司  特選
霜の畑パンタグラフの影走る   佐藤 淑子
  加茂都紀女  特選
つちふまずほぐす勤労感謝の日  松本 光子
  齋藤  都  特選
白壁を逃ぐる日脚や暮早し    秋葉 咲女
  星  揚子  特選
乗り継ぎの小さき駅や山眠る   加茂都紀女
  松本 光子  特選
冬菊のもたれ合ふ身の軽さかな  奈良部美幸
参加者の当日の一句(氏名五十音順〉
掌に数多のメモや十二月     秋葉 咲女
走り蕎麦七味の蓋をかけ直す   阿部 晴江
野紺菊赤錆厚き廃線路      石岡ヒロ子
黄落に空襲の陰大銀杏      五十嵐藤重
病棟を照らす一灯冬の星     江連 江女
無惨なる殺生石に風凍る     加茂都紀女
歌垣の山むらさきに冬うらら   菊池 まゆ
山眠るAIの読むニュースかな  熊倉 一彦
神宮の千木の輝く初時雨     齋藤 英子
ゆるゆると今日の一日を日向ぼこ 齋藤  都
霜の畑パンタグラフの影走る   佐藤 淑子
枯蟷螂眼は未だ枯れ切れず    柴山 要作
冬帽子寝ぐせ直して被りけり   杉山 和美
縁の物乾きて爆ずる小六月    鷹羽 克子
鴨の飛ぶ水面を蹴つてけり抜いて 中村 國司
輪王寺の燃え尽きさうな冬紅葉  中村 早苗
冬菊のもたれ合ふ身の軽さかな  奈良部美幸
小春日や跳ねて引きたる人力車  星  揚子
人は人を遺して逝けり冬の月   星田 一草
ぬひぐるみのせて小春の三輪車  松本 光子
咳一つ腰据へて読む『養生訓』  本倉 裕子
冬桜トロッコ列車の無人駅    谷田部シツイ
男体山のよく見ゆる日や大根干す 渡辺 加代


令和6年2月号掲載 句会報

秋の吟行俳句会~今高野山~

東広島市 真野 麻紀

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 私達東広島土曜俳句会は、十一月十八日(土)広島県世羅郡世羅町にある今高野山を訪れ、吟行句会を行いました。前日の天気予報では、「今シーズン一番の寒波」「雪が降ります」との事。寒がりな私は、防寒具や暖かい飲み物など万全の状態で臨みました。当日は、予報通り雪の舞う天気。バスが駐車場に着いた時には風も強く、「えっ。今日は吹雪ですか?」と思ったほどです。駐車場から総門(仁王門)に皆で移動し、その後約一時間半それぞれ自由に散策をしました。


総門(仁王門)

 今高野山は、弘法大師が世羅の地に泊まられた際、山頂に登られた後、麓にお寺を建てられたと伝えられており、その後の太田の荘の隆盛もあり、山内には重要文化財や観音像をはじめ多くの地蔵尊や芭蕉の句碑などもあります。今年は弘法大師生誕千二百五十年という事もあってか、吟行当日はマルシェも開催されていました。美しい紅葉や黄葉、舞う雪と句材あふれる吟行となりました。


地蔵尊

 実は、私は吟行参加は二回目。正直苦手です。こんな短時間で上手く句が作れるのか。悩みながら参加しました。


龍華寺境内

 十一時五十分、句会会場である世羅町甲山農村環境改善センターに移動し昼食。投句締切りは十二時半。その後、二時間半と少し駆け足ではありましたが、参加者十四名和気あいあいと句会を楽しみました。楽しい吟行句会に参加でき、良い経験となりました。

当日の一句抄
重文の結界石や冷えまさる    奥田  積
初雪の降り込む袂大師像     溝西 澄恵
野面積に銀杏黄葉の降り積もる  久保 徹郎
小雪舞ふいにしへの里今高野      有川 幸子
行く秋や昔を偲ぶ今高野     有川 光法
君と来し山の紅葉をひとり踏む  乙重 潤子
木洩れ日の坂道にゐて寒鴉    加藤三惠子
風さわぐ錦秋の山しならせて   佐々木智枝子
古寺の色重なりて冬紅葉     佐々木美穂
掌にコーヒー包み見る紅葉    仲島 伸枝
朱の橋の向かうは紅葉明かりかな 原田 妙子
北風や観光チラシめくりをり   松村 幸子
六花緋色にふれて消えにけり   真野 麻紀
引き水の池に重なる落葉かな   山口 和恵


令和6年2月号掲載 句会報

坑道句会十一月例会報

杉原 栄子

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 十一月二十七日(月)、今年最後の坑道句会の吟行句会が宍道湖の西岸にある宍道湖グリーンパーク周辺で行われました。残念ながらJA北浜句会の人達は、特産の十六島海苔の摘み取りが始まっており、忙しく出席がありませんで、この日は十一名の会員による句会となりました。
 私にとって、この公園に来るのは久々で、一、六ヘクタールあるという樹木林の中の道を通り抜け、グリーンパークの端にある野鳥観察舎に着きました。湖岸に立ち、それぞれにしばらく湖をながめていると、説明をお願いしていた職員の方が望遠鏡二台と参加者分の双眼鏡を持ってやって来られ、使い方を聞いた後、湖や近くの田んぼにいる野鳥を観察し、鳥の名前や見分け方、飛び方、鳴き声、餌などについて詳しく教えていただきました。今年初めて会えた白鳥、真雁や菱食、数多くの種類のある鴨類、眼光鋭い鶚、飛び方が優雅で、冠羽と背中の羽が美しく、田の貴婦人と言われる田鳧などを双眼鏡の丸い輪の中にくっきりととらえ、歓声を上げました。今年も簸川平野を忘れずにようこそ訪れてくれたと、出会えた鳥たちに心より嬉しく感じました。この他にも上げきれないほど多種の鳥が飛来していました。

 宍道湖のしじみ舟は、すでに操業の時刻が過ぎていたらしく、二艘ほどが舟着場に戻ってくるのが見えたほかは、見ることができませんでした。冠雪の伯耆富士は、湖の対岸遠くにうすく霞んで見えました。干拓地の広々とした田でくつろぐ白鳥は、とても優美で魅力的です。穏やかに打ち寄せる波と岸辺の葦のそよぎ等々、しばらく作句を忘れて湖をながめました。
 こうして午前中の吟行を終え、借りてあるグリーンパークのレクチャールームで作った句を推敲し、午後零時半締切りの投句を済ませました。各自持参の昼食・休憩の後、午後一時から句会が開催され、皆様の力作が発表されました。

 旅伏山へと夕日が傾く頃になると、宍道湖を囲む田のあちらこちらから、白鳥が連れ立って宍道湖岸の塒へと向かいます。空を見上げてこの様子を見ることのできる幸せを感じます。こうしてこの日の楽しい一日が終わりました。
 当日の句会の結果は、以下のとおりです。

 渡部美知子 特選(順不同。以下同じ。)
冬の雁胸を汚して田を漁る      三原 白鴉
静けさや水鳥水の音たてず      荒木千都江
みづうみにざつと数ふる鴨の数    荒木千都江

 三原 白鴉 特選
万の穂に万の風あり芒原       荒木千都江
群れながら向きそれぞれに浮寝鳥   荒木千都江
静けさや水鳥水の音たてず      荒木千都江

 荒木千都江 特選
水鳥の日矢差す湖にゆつたりと    井原 栄子
白鳥のすらりと伸ぶる首美しく    生馬 明子
あざやかに湖面に映る番鴨      山本 絹子

 久家 希世 特選
白鳥のすらりと伸ぶる首美しく    生馬 明子
双眼鏡の中に逆立つ鳰        山本 絹子
かりがねの声に見上ぐる斐伊の空   井原 栄子

 生馬 明子 特選
冬の雁胸を汚して田を漁る      三原 白鴉
遠めがね丸き世界に遊ぶ鴨      渡部美知子
かりがねの声に見上ぐる斐伊の空   井原 栄子

当日の高得点句
 七点

静けさや水鳥水の音たてず      荒木千都江
 六点
寒林を抜けて宍道湖波もなく     生馬 明子
白鳥のすらりと伸ぶる首美しく    生馬 明子
かりがねの声に見上ぐる斐伊の空   井原 栄子
 五点
冬の雁胸を汚して田を漁る      三原 白鴉
双眼鏡の中に逆立つ鳰        山本 絹子
遠めがね丸き世界に遊ぶ鴨      渡部美知子

当日の一句抄 (氏名五十音順)
静けさや水鳥水の音たてず      荒木千都江
ちよこちよこと歩む田鳧に見とれけり 生馬 明子
かりがねの声に見上ぐる斐伊の空   井原 栄子
水鳥や湖岸の森の覗き窓       大菅たか子
八雲立つの句碑の辺石蕗の花あかり  久家 希世
にほどりの潜る水輪と浮く水輪    杉原 栄子
打ち寄する波音やさし冬日和     原  和子
戯れて落葉踏み行くスキップで    松村れい子
風渡る水面窄めて鳰潜く       三原 白鴉
双眼鏡の中に逆立つ鳰        山本 絹子
置物のごとき鶚のふと動く      渡部美知子


令和6年3月号掲載 句会報

旭川白魚火新年句会

旭川 吉川 紀子

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 去る一月十三日(土)、雪晴れの中、旭川白魚火新年句会が市内の「扇松園」にて行われました。
 今回は、北見から金田野歩女先生が泊りがけで参加して下さり、会場までの送迎バスは、嬉しい歓迎の声と共に会場の扇松園へ着きました。
 お部屋は去年と同じ舞台のある部屋です。淺井夫妻の長男文人君は、二歳になり持参のおもちゃで舞台の上で楽しそうに遊んでくれ、パパ、ママ、皆さんの声掛けの中、なごやかに句会が始まりました。
 今回の得点方法は、出句五句の合計点で決める方法をとり、それぞれに賞品が渡されました。
 句会後の宴の冒頭では、野歩女先生よりご挨拶があり、昨年の札幌大会について、温かいねぎらいのお言葉をいただき、感謝感激の嬉しい乾杯となりました。
 文人君はぐずることもなく、みんなの席を回り、一人ひとりにハイタッチをしてくれて、お話も上手にできるようになり、目を見張る成長ぶりに、皆さん、感心しきり!
 楽しい美味しい賑やかな新年句会となりました。
 結果は、以下の通りです。(一句のみ紹介)

一位 小林さつき
 家長より威厳のありぬ睨み鯛
二位 沼澤 敏美
 片頰のほてりどんどを離れても
三位 萩原 峯子
 衣食住足りて息災千代の春

当日の一句(五十音順)
煮こごりの中や古代の魚の影   淺井ゆう子
初飛行能登半島の方を見る    淺井  誠
元朝の真澄の空の青々と     今泉 早知
目隠しの耳にくすくす福笑    金田野歩女
正月や遠きふるさと御殿まり   中村 公春
どんどの火龍登るごと御空へと  平間 純一
火の番は氏子総代どんど焼    三浦香都子
小さき目の竜の箸置きごまめ食ぶ 吉川 紀子



令和6年3月号掲載 句会報

令和六年栃木県白魚火会新春俳句大会

中村 早苗

令和6年3月号へ 

 一月七日(日)、寒に入ったとは思えない程暖かく穏やかな日となった午後、宇都宮市西生涯学習センターに於いて新春俳句大会が開催されました。
 参加者二十二名、五句出句、十句選、内特選二句で行なわれました。
 成績上位八名と飛び賞として十七位一名、役員の特選一位の句に賞品が授与されました。
 役員の特選句と参加者の当日の一句は次の通りです。

 役員特選句
柴山要作 選

鳥のこゑ満ちて古墳の三日かな  五十嵐藤重
毛糸編む針の動きを追ふひかり  江連 江女
 星田一草 選
書初や小筆を洗ふ水の音     齋藤  都
冬蝶の黄をやはらかく日に返す  阿部 晴江
 中村國司 選
文具屋を閉づる赤札寒夕焼    五十嵐藤重
胸の稚両手で初日摑みをり    江連 江女
 加茂都紀女 選
胸の稚両手で初日摑みをり    江連 江女
霊峰や微光を放つ初御空     渡辺 加代
 齋藤 都 選
背比べしつつ立ちたる初鏡    本倉 裕子
日の当たるところざわめく寒雀  阿部 晴江
 星 揚子 選
初春や光る背表紙「膝抱いて」  中村 國司
冬蝶の黄をやはらかく日に返す  阿部 晴江
 松本光子 選
冬蝶の黄をやはらかく日に返す  阿部 晴江
日の当たるところざわめく寒雀  阿部 晴江
 熊倉一彦 選
冬蝶の黄をやはらかく日に返す  阿部 晴江
鍵盤に十指の乱舞初稽古     中村 早苗
 本倉裕子 選
スキップの子ら銀行へ四日かな  齋藤 英子
一日をひらひら過ごす四日かな  中田 敏子
 阿部晴江 選
初春や光る背表紙「膝抱いて」  中村 國司
除夜の鐘心に染むる余韻かな   中村 早苗
 江連江女 選
幼児に七草粥を吹き冷す     菊池 まゆ
鍵盤に十指の乱舞初稽古     中村 早苗
 渡辺加代 選
胸の稚両手で初日摑みをり    江連 江女
八十歳はちじふは眉伸びざかり千代の春  中村 國司

 当日の一句(五十音順)
冬蝶の黄をやはらかく日に返す  阿部 晴江
眉目のよき巫女を選びて福箕受く 五十嵐藤重
老婆心磨きかかりて去年今年   石岡ヒロ子
柏手の白息散らす朝の杜     江連 江女
屠蘇祝ふ八十余ねんまたたく間   加茂都紀女
初景色畏み仰ぐ那須五峰     菊池 まゆ
読初の兜太龍太を範として    熊倉 一彦
年酒酌む生家をまもる三代目   齋藤 英子
書初や小筆を洗ふ水の音     齋藤  都
難のがれ朝茶頂く四日かな    佐藤 淑子
願はくば一日一笑老の春     柴山 要作
両側の媼はほとけ初参      杉山 和美
一日をひらひら過ごす四日かな  中田 敏子
初春や光る背表紙「膝抱いて」  中村 國司
お疲れと交はす言の葉晦日蕎麦  中村 早苗
そそり立つ日光連山年新た    奈良部美幸
人日の紅茶明るく注がるる    星  揚子
人はみな美しく老い屠蘇祝ふ   星田 一草
あらたまの水渾々と神の池    松本 光子
登りきて無口となりぬ初景色   本倉 裕子
地震地なゐちより帰省の子へのお年玉  谷田部シツイ
霊峰や微光を放つ初御空     渡辺 加代



令和6年3月号掲載 句会報

名古屋白魚火句会五周年記念感謝の会と句会

伊藤 妙子

令和6年3月号へ 

 寒波襲来の十二月十七日、浜松より村上尚子先生、渥美絹代先生、渥美尚作さんをお招きし、これまでご尽力いただいたお礼の式典と句会を行いました。
 式典では、牧野さんのハーモニカ演奏の中、お三方をお迎えしました。村上先生、渥美先生、尚作さんそれぞれへ感謝状と花束等を贈呈いたしました。感謝状の内容は、非常にウイットに富んだ内容であり、また尚作さんにはサンタ帽を被って授与に臨んでいただいたこともあり、会場は爆笑の渦に包まれました。

 また、月一回の句会のご指導と雑務を厭わず行っていただいております檜垣会長と野田さんには、以前に結社の表彰を受けられる等ご功績もあり、遅ればせながら、お祝いの花束をお送りしました。
 その後、和やかな雰囲気の中、茶話会を行いました。会員全員の一言もあり、笑いの中で茶話会はお開きとなり、引き続きお招きの三名と名古屋句会十四名、計十七名(内一名は欠席投句)が参加した句会をいたしました。
 先生方からは、「名古屋句会の皆さんはとても良い出来です」の一言をいただき全員の気持ちが和みました。それぞれ特選句、秀句、入選句として採っていただき、該当の参加者は大変嬉しそうな表情をしておられました。
 和気藹々のうちに午後四時過ぎにすべての予定を終了し、記念の集合写真撮影をして閉会となりました。

参加者の当日の一句
年忘大きな猪口を手渡さる    村上 尚子
糸かけしままのミシンや雪催   渥美 絹代
楽の音に踊る絡繰返り花     渥美 尚作
白鳥や倭建命の化身なる     檜垣 扁理
雪吊の天辺星を指してをり    吉村 道子
冬ぬくし鯉のあひだに雑魚光る  野田 美子
病室に鼾の聞こえ冬ぬくし    伊藤 達雄
神明社の落葉焚く煙町包む    伊藤 妙子
石臼も杵も並ぶや年の市     後藤 春子
教へ子の作りし蜜柑贈りけり   牧野 敏信
落葉ふむ音にせかされ逝きにけり 前野 砥水
灯の点る夜の公園に落葉舞ふ   白井 幸雄
冬日さす城を貫く心柱      大塚 知子
突風に落葉渦巻く交差点     三宅 玲子
小春日や乳母車の子手を振りて  森  節子
校庭のグランドゴルフ落葉舞ふ  遠山  都
木の下の雑草おほふ落葉かな   井上  彰



令和6年4月号掲載 句会報

森淳子代表ご苦労様会

函館白魚火会 内山 実知世

令和6年4月号へ 

 一月十三日「おいしいお料理と楽しい集い」を開催しました。今井星女先生ご退任後、函館白魚火会の代表を勤められた(ご高齢ということで引退される)森淳子さんへの感謝を表したいとの案内に、十三名が集まりました。
 一言メッセージでは、お礼の言葉や懐かしいお話もありました。
勿忘草わすれなぐさをあなたに」を赤城節子さんが歌われると、フットワークの良い淳子さんがデュエットされるシーンもあり、楽しくてお元気な様子が嬉しかったです。句作のポイントについては、淳子さんから、印象に残った事をメモしておくと良いとアドバイスも。
 新代表の広瀬むつきさんが、「私達も淳子さんのように元気で良い俳句を作りましょう」と話されました。吟行会も準備中です。
 十二年余り句会報を担当された𠮷田智子さんがお礼のお花を贈呈し、根川文子さんのリードで「今日の日はさようなら」を唱いました。淳子さんに感謝しながら良い一日を過ごしました。
(会場手配等は西川さん、写真担当は富田さん)
(イベント担当内山)



令和6年5月号掲載 句会報

島根地区白魚火俳句大会開催
―白岩主宰を迎えて―

雲南 森脇 あき

令和6年5月号へ 

 令和六年二月二十四日(土)、白岩敏秀主宰をお迎えして、島根地区白魚火俳句大会が出雲市ラピタ本店三階天雅の間に於いて開催されました。この大会は、もともと令和元年五月開催を計画中、突如発生したコロナウィルス急拡大によりやむなく中止になっていただけに皆さんの期待が大きく、当日は遠く津和野町、隠岐島なども含め、計五十九名の参加を得て賑やかに句会大会が開かれました。

 午後一時、開会にあたり準備に当たった三原白鴉氏より、「今年は白魚火創刊七十年目である記念の年でもあり、白魚火創刊の地である松江市に於いて開催される白魚火全国俳句大会が盛大なものとなるよう、島根地区の白魚火会員が一致協力して取り組みましょう」と開催の趣旨が述べられました。
 続いて、主宰からは「白魚火創刊七十年という歴史は全国の結社に誇れるものであり、発祥の地である出雲の皆さんのエネルギーを全国の皆様に示し、松江市で開催される全国大会を大いに盛り上げましょう」とのお言葉をいただきました。

 句会は、参加申込者六十三名が事前投句した当季雑詠三句、計一八九句が印刷配付された選句表中から、白岩主宰には特選五句、入選句数任意、曙・鳥雲同人は、各特選三句、入選十句、そして一般選七句の互選の方式で始まりました。選句終了後、渡部美知子、原みさ、妹尾福子の三氏による披講、原和子、牧野邦子、山本絹子三氏による代返により、円滑に進められ、最後に主宰の特選五句、曙同人の特選三句、鳥雲同人の特選第一位の句にはそれぞれ短冊が授与され、会場は大いに盛り上がりました。
 その後、白岩主宰から、特選句について丁寧な選評をいただきました。

 また、主宰は、作句について、良い句とは「リズムが良い句」「読み手に伝わる句」「景色が見え、感じる句」「言葉の発見のある句」「明るく楽しい安らげる句」であり、そして、「何よりも俳句は楽しみながら作る事が大事である」とのご指導をいただきました。
 句会終了後、四十九名が参加して懇親会が開かれました。この俳句大会の呼び掛け人の一人であり、行事部山陰ブロック代表でもある田口耕氏から、来たる全国大会松江大会への一致協力の依頼と大会成功を祈念して乾杯があり、開宴となりました。同じ島根と言いながら、地区が異なり普段は誌面でしか会えない句友も多く、テーブルのそこここでにぎやかな声が上がり、互いに交流を深めることができました。

 途中、各句会ごとに句会や参加者の紹介、テーブルごとの記念撮影などがあり、終始和やかな雰囲気の続く中、石川寿樹氏の締めにより懇親会がお開きとなりました。
 懇親会の余韻の残る中、私達笹百合句会も今年の全国大会に向け気持ちも新たに頑張ろうと語り合いながら会場を後にしました。
 白岩主宰には、お忙しい中を出雲までお越しいただき、直接ご指導をいただきましたことに感謝申し上げるとともに、このような盛大な俳句会を企画し、お世話いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

白岩敏秀主宰 特選第一位~第五位
洗顔の水に弾力春立てり      古川美弥子
早春の光に向かひボール蹴る    藤田 眞美
子ら連れて春をさがしに斐伊の土手 生馬 明子
泣く声が稚児のちから福寿草    藤原 益世
洗ひ場の固き石鹸寒の水      古川美弥子

安食彰彦副主宰 特選第一位~第三位
立春の日差しを皺の手に受くる   西村 松子
母の息足してまんまる紙風船    渡部美知子
薄氷とふ動かぬ水の美しき     荒木千都江

渡部美知子 特選第一位~第三位
早春の素描のごとき車窓かな    岡  久子
児に吹いていつしか夢中しやぼん玉 三原 白鴉
薄氷とふ動かぬ水の美しき     荒木千都江

三原白鴉 特選第一位~第三位
母の息足してまんまる紙風船    渡部美知子
下萌や潮風に立つ牧の牛      白岩 敏秀
笑ひ声波へ飛ばして海苔を摘む   小澤 哲世

生馬明子 特選第一位~第三位
早春へペダルを踏みて髪切りに   青木 敏子
父親と同じ校歌を卒業す      原  和子
白鳥の水面の光蹴つて発つ     三原 白鴉

石川寿樹 特選第一位~第三位
黒髪を結ぶ船頭春の雪       江角トモ子
飛び足で岩から岩へ海苔掻女    福間 弘子
甘え来る子牛の眸春を待つ     深井サエ子

小村絹代 特選第一位~第三位
薄氷とふ動かぬ水の美しき     荒木千都江
下萌や潮風に立つ牧の牛      白岩 敏秀
山茶花や右と左に別れ行く     中間 芙沙

久家希世 特選第一位~第三位
影ほどの軽さで飛びぬ冬の蝶    荒木千都江
初音いま聞きしと夫の頰ゆるぶ   陶山 京子
沈下橋くぐる水音日脚伸ぶ     松崎  勝

田口耕 特選第一位~第三位
母と云ふだけの幸せ年明くる    安部 育子
立春の日差しを皺の手に受くる   西村 松子
黙々と蟹と向き合ふ同窓会     釜屋 清子

永島のりお 特選第一位~第三位
山住みの身に纒ひくる雪解風    大草 智美
晩熟の子に記念樹の梅ふふむ    周藤早百合
母と云ふだけの幸せ年明くる    安部 育子

西村松子 特選第一位~第三位
影ほどの軽さで飛びぬ冬の蝶    荒木千都江
一月の雲の白さや出雲和紙     安部 育子
はだれ野を行く荷台より牛の鼻   永島のりお

原和子 特選第一位~第三位
笑ひ声波へ飛ばして海苔を摘む   小澤 哲世
母の息足してまんまる紙風船    渡部美知子
はだれ野を行く荷台より牛の鼻   永島のりお

原みさ 特選第一位~第三位
寒凪の一湾ぐつと潮の引く     落合 武子
ふつくらと抹茶のみどり春立ちぬ  藤原 益世
早春の光廻してゐる水車      青木 敏子

牧野邦子 特選第一位~第三位
笑ひ声波へ飛ばして海苔を摘む   小澤 哲世
下萌や潮風に立つ牧の牛      白岩 敏秀
早春の光廻している水車      青木 敏子

高得点句
 二十点
母の息足してまんまる紙風船    渡部美知子
 十七点
影ほどの軽さで飛びぬ冬の蝶    荒木千都江
笑ひ声波へ飛ばして海苔を摘む   小澤 哲世
 十二点
白鳥の水面の光蹴つて発つ     三原 白鴉
白魚の命を透かす二三寸      栂野 絹子
 十点
下萌や潮風に立つ牧の牛      白岩 敏秀
虹足を隠岐に置きたる冬の虹    松村れい子
 九点
洗顔の水に弾力春立てり      古川美弥子
春めくやたなびくやうに牛の声   田口  耕



令和6年5月号掲載 句会報

雛流し吟行句会記

東広島 仲島 伸枝

令和6年5月号へ 

 三月十六日(土)広島白魚火土曜句会は、総勢十七名で東広島市西条町にある黒瀬川で雛流しを行いました。雛を海や川に流すことによって、災厄を払うといわれています。
 日替りのごとく暖かさ寒さが交互にくる中、当日は雲一つない快晴で、せせらぎを聞き初音を聞き、向こう岸では竹林がそよ風に揺れ、川の色は青く深さと流れの速さを感じられました。川の水も澄み川底の砂がきらきら煌めき舟の影も見え優雅でもあり、寂しさもありの雛流しでした。頬を撫でる風が心地よく和やかな時を過ごすことが出来ました。

 予め作っていた紙雛にこんな顔あんな顔と様々に楽しみながら目、口を入れ、美男美女の出来上がり。和紙に男雛女雛を乗せ花と手作りのあられを手向けて、いろいろな思いを託しゆっくりと川へ流しました。
 すいすい流れる雛があれば、ゆっくり同じ場所でくるくる回る雛、風に押し戻されて溯る雛があり、杖で流れに押し出す雛も。「それぞれの人生のようですね」と話し合ったことです。

 河原で昼食をとり句作に悩みながらも和気藹々で句会場に移動しました。今回の吟行は川、河原に集い、わいわいのんびりと楽しみました。ほとんどの人が雛流しは初めてで、感動を胸にまるで遠足の様でした。以前にもまして親睦も深まったように思います。

当日の一句抄
笹竹に風生まれたる雛送り     奥田  積
淵青き流れに送る雛かな      溝西 澄恵
堰越ゆる水音ゆるく水草生ふ    久保 徹郎
そよ風にここちよいかと流し雛   有川 幸子
手を離れ流れのままに行く雛    有川 光法
さざ波の水面滑りて鴨の行く    上野由起子
雛段の段降りてゆくおんな雛    乙重 潤子
細波は風の気紛れ流し雛      加藤三惠子
細き目を入れて美男の紙雛     佐々木智枝子
手作りのあられ香ばしひなまつり  佐々木美穂
母も吾も同じ日生まれ雛流し    田中 京子
のんびりとのんびりと行く雛のあり 仲島 伸枝
川底の影連れゆるり流し雛     長谷川佳子
流し雛川辺に集ふ笑ひ声      原田 妙子
きらきらと川面ひかりて雛流る   檜高美佐緒
水の影連れて揺れたり流し雛    真野 麻紀
流し雛手向けの花のこぼれたり   山口 和恵


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